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My salad days in Washington, D.C.

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2004年 06月 26日

ボブ・サップ

 日本のテレビに登場する、いわゆる「アフリカン(アメリカン)オリジン」の人々の取り上げ方について、私は大きな違和感を感じています。日本はアフリカ大陸から地理的に遠く離れていて、平均的な市民生活の中で肌の色がチョコレート色の人に出会うのはめったにあることじゃないよね。そんな事情を考慮に入れたとしても、テレビの見方は偏見と差別に満ちており、その描写について視聴者が何も抗議しないのはおかしい。
 まず、ボブサップについてまわる形容詞。「野獣」とか、「怪力」とか、「ケモノ」とか。それから、彼のTVコスチューム。上半身裸、筋肉ムキムキ。彼に与えられたセリフ。日本語片言交じり、また攻撃姿勢のボディーラングイッジ。
 それからサンコンさん。あまり最近TVでは見かけないけれど、こないだたまたま、サンコンさんが吹き矢で女性を捕まえるというプログラムがあっていました。(因みに、サンコンさんは吹き矢を吹いたのは生まれて初めてだとか。)吹き矢=原始人生活のイメージか。
 これらのポイントからいえる、日本のTVの黒人に対する視点は、原始的、動物、人間でない、非文明ってところかしら。つまり、肌の黒い人を、同時代に生きる人間として見ていないのです。人としてどころか、動物園の檻の中にいるチンパンジーと同じような視点で見ている。ボブサップも、サンコンさんも、大道芸の見世物なのです。

 アメリカは、黒人差別が完全に撤廃されていない国だといわれています。イギリスも、とりあえずケンブリッジの大学町で黒人のプロフェッサーを見かけた記憶はありません。でも、このどちらの国も、アフリカン・オリジンの人々に対する視点は、少なくとも彼らを人間としては認めている気がする。白=善、黒=悪というような概念を持つ事がタブーであるし(私はそう教えられた)、黒人に対する侮辱・社会差別などに関して、社会はもっとセンシティブです。もちろん、アメリカは黒人奴隷制の上に第一次産業が花開き、またイギリスはアフリカに植民地を持っていた国ですから、歴史的・政治的にも日本よりは黒人の人々とつながりが深い。つながりが深いと、軋轢も大きくなるわけで、その軋轢に対して社会が無知蒙昧ではいられなくなるわけですが。

 これに対して、日本は、アフリカオリジンの人口が少なく、距離的に離れているために、彼らに対する差別・偏見に対して人々は鈍感です。そしてその鈍感さが許されている社会です。アフリカに対する日本人の意識は、実は安土桃山時代の世界観と同じぐらいなんではないでしょうか。少なくとも、TVのボブ・サップやサンコンさんの取り上げられ方を見る限り、スペイン人を「毛唐の南蛮人」と呼んだあの頃から、未知の世界に対する日本人の無知蒙昧さ・無関心さは変わっていないのではないでしょうか。私は、はだかのボブサップがTVに登場するたびに、へどが出そうです。

by my-salad-days | 2004-06-26 21:57 | 日誌


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